世界での状況
遺伝子組み換えの何が問題?のページで問題についてはご理解いただけたと思います。さて、それではそんな大問題の遺伝子組み換え作物は世界でどれほど拡がっているのでしょうか?
色の濃さは遺伝子組み換えがその国の農業生産に占める割合で、色が濃いほど割合が高くなります。若干データが古いのですが、全体として大きな変化はありません(アフリカなどで若干増えています)。遺伝子組み換えは世界の耕作地のわずか10%を少し超したくらいに過ぎず、南北アメリカ大陸に集中していることがわかります。
遺伝子組み換えを使った農業は1996年に始まり2014年で19年目を迎えようとしています。しかし、決して順調には拡がっておらず、むしろ世界各地での反対の前に拡がっていないと言った方がいい現実が見えてきます。
しかし、それでは遺伝子組み換えは無視できるものなのでしょうか? 決してそうではありません。右の図は南北アメリカ大陸に大半の大豆生産が集中していることを示しています。
そして、この地域での大豆生産は9割近くが遺伝子組み換えとなっています。大豆は家畜の飼料や加工食品の原料として戦略的に重要な穀物となっていますが、その大部分が遺伝子組み換えになってしまっているのです。
大豆は日本の食文化の要となる穀物です。味付けには味噌や醤油、さらには豆腐、納豆など大豆がなければ日本の食文化は考えられないでしょう。しかし、日本は明治以降、農業を犠牲にして工業化する道を選びました。第二次世界大戦以前にすでに日本の大豆自給率は2割程度まで落ちていたと言います。その必要な大豆のほとんどを日本は中国東北部と朝鮮半島から持ってきていたのです。
第二次大戦後、その大豆の供給が途絶えた後は日本は米国市場に、そしてさらに南米市場に大豆を求めました。しかし、そうしたことに日本社会が関心を向けなくなっていた間にそのほとんどが遺伝子組み換えとなってしまったのです。
危険度を増す一方の遺伝子組み換え
除草剤をかけてもなかなか枯れない雑草(スーパー雑草)が遺伝子組み換え作物を生産している地域で急速に増えています。そのスーパー雑草の対策のため、使われる除草剤がうなぎのぼりになっており、米国では2013年、環境庁が作物へのグリホサート(モンサント社の開発した農薬、商品名としてはラウンドアップ)の残留許容量を大きな反対にもかかわらず大幅に引き上げてしまいました。そうしなければ作物が売れないほどの事態になっていることがわかります(除草剤グリホサートはモンサント社は安全と宣伝していますが、発ガン性や糖尿病、自閉症など神経症などへの影響が指摘されています)。
スーパー雑草対策として、グリホサートに加え、ベトナム戦争の枯れ葉剤作戦でも使われた枯れ葉剤の主成分である2,4-Dやジカンバに耐える遺伝子組み換えが登場してきています。米国やブラジル、アルゼンチンではベトナム戦争に使われた枯れ葉剤が撒かれることへの反対が強まり、大きな反対運動が起きていますが、日本政府はすでに承認済であり、米国などで生産されれば、日本にも家畜の飼料や加工食品の原料として使われる可能性が高くなってきています。
この他に、除草剤耐性と害虫抵抗性(害虫が食べたら死ぬバクテリアのタンパクを生成するように遺伝子組み換えされたもの)の両方の機能を持った遺伝子組み換えが登場してきています。1つの除草剤だけでなく複数の除草剤に耐え、また1つの害虫だけでなく複数の害虫を殺すタンパクを何種類も生成する遺伝子組み換え(SmartStax)は、それ以前のものよりも有害性が高いと指摘する声があります。
主な遺伝子組み換え作物
すでに市場に出ている主な遺伝子組み換えは現在、大豆、トウモロコシ、綿、ナタネ、甜菜(砂糖の原料)など、この他に、アルファルファ(牧草)、果物ではパパイヤ、野菜ではズッキーニ、イェロー・スクアッシュなどがあります(バングラデシュでナスの遺伝子組み換えが承認されました)。
しかし、今後、世界の多くの主食となっている米や小麦にも遺伝子組み換えの導入が計画されており、パイナップル、リンゴ、バナナ、カカオなどでも研究が進んでいます。
また農作物以外では、蚊、蚕などがすでに開発されている他、鮭が商業流通間近と言われており、豚、ヤギ、牛などの遺伝子組み換え動物も実験が進んでいます。またユーカリなどの樹木も開発が進み、世界の広汎な地域が影響を受ける可能性があります。
さらに大きな問題となる前に、遺伝子組み換えの問題に多くの人が気がつき、こうした計画が実行されないようにしていく必要があります。
(公開日:2014年2月1日)