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人から人へ、手から手へ

日本での状況

 日本には遺伝子組み換え食品表示義務があります。これは遺伝子組み換え作物の商業栽培が始まった1996年から懸念が高まって、消費者運動の力で実現できたものです。しかし、その実態は消費者が要求していた表示制度とはほど遠いものになっており、消費者運動はさらに厳格な表示制度を求めています。

日本の遺伝子組み換え食品表示の問題点

日本のGM食品表示は8種類の農産物とその加工食品だけ

 日本では表示義務の対象となるのは、大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、てん菜やパパイヤの8種類の農産物と、これを原材料とする33種類の加工食品だけです。一方、EUではスーパーなどの販売店のみならずレストランでの表示も全品目義務付けられています。

 対象とならない遺伝子組み換えは表示しなくていいので、消費者は知らない間に遺伝子組み換えを食べてしまう可能性があります。

 この8種類以外の農作物の場合は遺伝子組み換えでない、という表示を日本政府は禁止しています。承認しているのはこの8種類だけだから、ということですが、遺伝子組み換えか組み換えでないかの選択は消費者にとって重要ですので、表示してはいけないという政策には納得がいかないものです(米国には遺伝子組み換えでないレーベルが存在しています)。

醤油などは表示義務なし

 しかも、醤油、大豆油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン、コーン油、菜種油、綿実油、砂糖は、表示が不要とされています。トウモロコシや大豆から作ったこれらのものの多くは現在日本では多くが遺伝子組み換えを含んでいると思われますが、それは表示する義務がないのです。

 日本の菜種油はそのほとんどが遺伝子組み換えを原料としており、そうでないものは生協やこだわりのある生産者から買わない限り、買うことができないのが現状です。

家畜の飼料も表示対象ではない

 豚肉、牛肉、鶏肉などはどうでしょうか? 遺伝子組み換えの餌を使っているかどうか、これもまた表示義務がありません。遺伝子組み換えの餌で育った肉を食べることは間接的に遺伝子組み換え大豆やトウモロコシを食べることになるのですが、表示義務がないので、その肉がどんな形で作られた肉なのか、現在は消費者は知る術がないのです。

高い混入率を認める

 「遺伝子組換えでない」の表示でも、重量で5%未満の遺伝子組換え作物の混入が許されています。EUの0.9%未満に比べて大幅に高いものとなっています。そのため、日本で遺伝子組み換えでないとして売られている同じ食品がヨーロッパでは遺伝子組み換え食品として売られているケースがあります。

原料の上位3位のみ

 遺伝子組み換え農産物がその商品の原料の上位3位以内、全重量で5%を超えなければ遺伝子組み換えを使っていても表示しなくてよいとされています。食品添加物などは遺伝子組み換えを使っていても消費者には知らせる必要がないことになります。

日本は遺伝子組み換え輸入大国

 なぜ日本の遺伝子組み換え食品表示はここまで甘いかというと、日本は世界で最大級の遺伝子組み換え輸入大国である現実を隠すためであると言えるでしょう。もし、厳格な食品表示をしてしまえば多くが遺伝子組み換え食品として表示されることになり、消費者の反発を生むことになるでしょう。
 
 残念ながら日本は大量の遺伝子組み換え作物を主に米大陸から輸入しています。推定ですが、大豆、トウモロコシ、ナタネのほとんどが遺伝子組み換えになっていると言われています(2010年のデータで大豆75%、トウモロコシ80%、ナタネ77%)。

 日本政府は毎年、多数の遺伝子組み換え作物の食用、飼料用などに承認しており、耕作にもすでに98種を承認しています(2014年1月27日現在)。その中には他の国では禁止されているものがあり、最近では米国や南米で大反対されている枯れ葉剤耐性の遺伝子組み換えなども含まれています。残念ながら、こうした実態を日本のマスメディアはまず報道しません。

 日本がこうやって遺伝子組み換え作物を消費者に気がつかないように消費していることは日本の消費者の健康を損なっているだけでなく、国外での遺伝子組み換え作物の生産を進め、広い地域で大きな問題を作り出すことにつながっているのです。

日本における遺伝子組み換え作物の耕作実態

 日本ではまだ遺伝子組み換え作物の商業栽培は始まっていません。まったく試みられなかったのではなく、実際に遺伝子組み換え作物の栽培を始めようとしたケースはこれまでにも存在してきました。しかし、地元の生産者の方たちが中心となって反対した結果、現在のところ、遺伝子組み換えは日本では商業栽培されていません。

 そうした経験を経て、遺伝子組み換え栽培が始まることを防ぐために、遺伝子組み換えに反対する生産者はGMOフリーゾーン宣言を行っていますGMOフリーゾーン運動のすすめ[遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン]。その面積は年々拡がっています。

活発化する遺伝子組み換え実験場

 遺伝子組み換え作物の商業栽培は日本では行われていませんが、遺伝子組み換え実験農場は多数存在しており、多国籍企業の遺伝子組み換え企業も実験場を持っているだけでなく、日本のバイオテク企業もまた独自の遺伝子組み換えの開発を進めています。

 この地図にある遺伝子組み換え実験農場では、日本に輸入される多くの遺伝子組み換え作物の栽培実験が行われています。花粉の飛散などを防ぐ措置をしているというのですが、完全に密封された空間で実験されているわけではありません。
 
 英国はヨーロッパでもっとも遺伝子組み換えの開発を推進している国ですが、2014年には遺伝子組み換えの実験は一切予定されていないと言われています。それに比べ日本ではこれらの遺伝子組み換え実験場の稼働率は非常に高く、残念ながら、それは日本が世界でも有数の遺伝子組み換え推進国となっている現実を表していると言えるでしょう。

遺伝子組み換えナタネが日本で拡がる

 日本で遺伝子組み換え商業栽培が行われていないにも関わらず、輸入されるナタネが港から輸送される途中に落ち、それが自生して拡がってしまうという深刻な事態が起きています。ラウンドアップ耐性(モンサントの除草剤に耐える性質)やバスタ耐性(バイエル社が開発したリバティ・リンクが持つ除草剤バスタに耐える性質)をもった遺伝子組み換えナタネが日本の多くの港で発見されています(遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン:遺伝子組換えナタネが各地の港から侵入)。
 
 遺伝子組み換えナタネが自生するだけでなく、同じアブラナ科であるブロッコリーなどとも交配してしまい、遺伝子組み換えに汚染してしまったブロッコリーなどが出現してしまっているという報告もあります(隠れGMナタネ及び交雑種の拡大調査)。
 
 さらに遺伝子組み換え大豆やトウモロコシも自生しているという報告も出ており、文字通り、遺伝子組み換え作物が制御不能になりつつある状況が生まれてきています。
 
 以上の例は日本に輸入されている穀物から生み出されている種子が日本で自生してしまっているものですが、これ以外に、沖縄で遺伝子組み換えパパイヤの苗が遺伝子組み換えされていることがわからずに植えられてしまって農家が大きな被害を受けたケースがあります。これらの遺伝子組み換えパパイヤは伐採命令が出て、伐採されたのですが、被害を受けた農家には保障もなく、その管理のあり方、被害を受けた農家の救済に大きな問題があることを示しています。
 
 こうした問題に根本的に対処するためには遺伝子組み換え作物を輸入しない、遺伝子組み換え作物を作らせないという対応を世界規模で行っていく必要があるでしょう。

(公開日:2014年2月1日)

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