どうすべきか?
遺伝子組み換えを使った農業が南北米大陸を中心に農民や住民の健康を損ない、環境に被害を与えています。そして、消費者にとってのリスクもまた十分な検証がされていません。健康被害の実態が完全につかめるのは何年先のことになるかわかりません。この問題に対してどのようにしていくべきでしょうか?
遺伝子組み換え食品を食べない
現在の日本の遺伝子組み換え食品表示は十分なものではありません。しかし、遺伝子組み換えされている作物も現在はまだ限られており、遺伝子組み換えを使わないことを宣言している生産者から直接購入したり、生協や共同購入をすることを通じて、遺伝子組み換え食品を食べないようにすることはまだ可能であり、第一に重要になります。
予防原則の確立を!
カナダにおけるナタネやアルゼンチンの大豆のように、すでにほぼすべてが遺伝子組み換えになってしまう地域が出てきています。もし何年か先に遺伝子組み換え作物が健康に大きな問題を引き起こすことが証明された時に果たして、遺伝子組み換えでない農業に戻ることは可能でしょうか?
深刻な不可逆的な事態が引き起こされることが予想されうる時、それを避ける必要があること=予防原則の必要性が国際的にもうたわれています(たとえば1992年国連環境開発会議でのリオ宣言)。遺伝子組み換えはこの予防原則の見地に立つとき、避けるべきものといわざるを得ません。日本でもこの予防原則の見地にたった食料・農業政策をしっかりと打ち立てることが必要です。
ボトムアップのアプローチの有効性
マスコミがこの問題にほぼ沈黙を守っている日本の中で、この予防原則に基づく政治を確立することはそう容易ではないのが現実です。しかし、世界の中にはユニークな方法で予防原則に基づき、遺伝子組み換えを禁止する例も出てきています。
1つ有効な方法は自治体で遺伝子組み換えを排除する政策を確立することです。自治体は中央政府に対して、生活に密着した存在です。その分、生産者や消費者の声が直接反映できる可能性も高く、中央政府に比べれば多国籍企業の影響力も低くなります。
たとえばペルーでは自治体単位で遺伝子組み換えを作らないGMOフリーゾーン宣言をあげていきました。すべての自治体が宣言した後に、ペルーの国単位での遺伝子組み換え10年耕作禁止政策が確立しました。コスタリカでは現在面積で8割の自治体がすでに遺伝子組み換えフリーゾーン宣言をしています。
自治体に遺伝子組み換えゾーン宣言をさせるのが難しい場合、畑を持っている人は自分の畑を、庭のある人は自分の庭を遺伝子組み換えを植えさせない遺伝子組み換えフリーゾーンとして宣言していき、最終的に住んでいる自治体全体を遺伝子組み換えフリーゾーンにすることも可能でしょう。
自らの選択を元に周囲を巻き込んで大きなものにしていく。これはどこでも十分可能なものです。
遺伝子組み換え作物生産地域の農民・住民との連帯
しかし、日本のように国外に農業生産を依存している国では特にそうですが、自分たちの地域で遺伝子組み換えが耕作されなければいい、という問題ではありません。遺伝子組み換え作物生産地域で撒かれる農薬は飼料などを通じて私たちの胃袋にも入ってきます。
遺伝子組み換えが集中する南北アメリカ大陸から今、アフリカやアジアにもそれが拡がろうとしています。世界の多様な農業が遺伝子組み換えのモノカルチャーに変えられてしまい、種子の多様性を失う時、その世界の生態系はより変化に弱くなります。
こうした遺伝子組み換えの世界的な拡大を防ぐためには、遺伝子組み換え作物が植えられている地域で遺伝子組み換えに抗して闘っている農民や住民との連帯が重要な役割を担っています。
オルター・トレード・ジャパン(ATJ)はアジアなどの生産者との連帯を民衆交易を通じて進めてきました。そのネットワークを通じ、こうした連帯を進めていきます。
共通の未来へ
遺伝子組み換えは第二次世界大戦で急速に巨大化した化学企業による農業進出の第2段階と言われます。戦後、緑の革命として化学肥料と農薬を使った農業が世界で進められました。その延長にこの遺伝子組み換えがあります。
化石燃料(石油、天然ガス、リン鉱石)に頼ったこうした農業は未来にわたって持続することはできません。世界を汚染し、気候変動を激化させ、環境と人びとの健康を破壊していきます。
こうした化学産業中心の農業ではない別のもう1つの農業が今、世界各地で大きく拡がりつつあります。それがアグロエコロジーです。これは生態系を痛めることなく、高い生産性を上げ、農民の自立、地域の自立を可能にする農業と社会のあり方です。こうしたオルタナティブな実践をオルター・トレード・ジャパン(ATJ)は民衆交易を通じて広げていきます。
(公開日:2014年2月1日)