エコシュリンプ交易20年の歩み
エコシュリンプが始まった背景
1961年輸入自由化以降、日本のエビ消費量・輸入量は急増し、世界一のエビ消費国になりました。その多くは東南アジアから輸入され、東南アジアでは日本向けのエビを作るために、マングローブの大規模な伐採が行われ、大きな環境問題になっていました。マングローブは地域の漁民を支える魚を育てる環境でもあり、それが破壊され、大きなエビ養殖場に変えられ、地域の漁民は生活の糧も奪われています。
さらに養殖エビでは人工飼料や抗生物質が多用され、エビの病気や環境汚染の心配なども高まりました。エビ加工工場でエビに保水剤や変色防止剤などが使われているのですが、その実態がわからず、消費者の側の心配も大きくなっていました。
そのような中、エビの引き起こす問題を取り上げていた生協や団体の消費者からは安心して食べられ、産地に負荷をかけないエビが求められていました。
エコシュリンプの五原則
『エビと日本人』の著者である村井吉敬氏の紹介で、インドネシアのエビの粗放養殖をしている生産者との出会いがありました。ATJはエビをもうひとつの事業として取り組んでいくことを検討し始めました。
こうして、1992年に生協、消費者団体とATJによって、インドネシア粗放養殖エビ「エコシュリンプ」が始まりました。
エコシュリンプは、「取引の五原則」に基づいています。
- 環境保全型のエビ事業であること
- 生産者、加工業者、消費者各々との間で協働関係をつくること
- 食品として安全性を追求すること
- 価格構成が生産、流通、消費の段階で明確であること
- 公正な価格で安定した取引であること
エコシュリンプの20年間で最も大きく変わったこと
1992年当初は直接生産者とつながって事業をすることができませんでした。そのため、開始当初のエコシュリンプはATJが指定した産地から原料を調達し、基準に沿ったエビ製品つくりに協力してくれる工場と連携する形から始まりました。エコシュリンプの挑戦はこのような関係を変えるところから始まりました。
日本側が求める管理基準を満たすためには、収獲から工場に搬入するまでの工程をトレースできる必要があります。しかしながら、当時、商社や水産会社は最終製品となった冷凍エビを買い付けるだけでした。輸入者がすべての工程を把握できるシステムは例がありませんでした。
1998年以降、ATJが直接産地に関わり独自に生産者から購入したエビを、現地工場に加工を委託するという、段階に進みます。
ATJ現地事務所開設(2000年)を皮切りに、2003年6月、産地での活動範囲の広がりや、生産者との関係構築に向けたさらなる基盤を確立するために、シドアルジョにATJの100%出資現地法人、オルター・トレード・インドネシア(ATINA)社が設立されました。
2004年には従来の主力産地シドアルジョに加えて、グレシックからの買入れ強化、ならびにスラウェシ島南部(ピンラン県)からの買入れが始まりました。次いで、製造部門での取組みとして2005年5月にATINA加工工場を立ち上げることで、事業開始以来の目標であった自社工場でのエコシュリンプ加工を実現すると共に、原料の受け入れから加工までをATINA社で一貫して管理する体制が整いました。さらに、その管理を強化するため、同年にはATINA社独自の検査実験室を立ち上げ、製品の微生物分析を中心に、産地の環境分析などにも取り組み始めました。
有機認証システムの導入(2002年~2008年、シドアルジョ/当時のしくみを改善することを目的のモデルとして導入)や、それに基づく登録メンバー制や、原料集荷におけるクールボックスの導入(シドアルジョ・グレシック)、専用発泡スチロールの導入(スラウェシ)などを実施し、産地毎に違いはあるものの、トレーサビリティの改善を進めてきました。
「産直・生消提携」で相互交流など顔の見える関係を重視して産地での取組みを進めていく中で、ATJは生産者の伝統や価値観、生産方法を守りつつ、エビの品質と安全性の向上を進めていくことを目的として、内部確認の導入を進めています。それは、生産者が伝統的に生業としてやってきた粗放養殖の生産手法の大切さを認識することにもつながり、環境保全型養殖のあり方として国際会議などで報告されるようになりました。また、生産者が伝統的に生業として行ってきた生産手法の大切さを認識し、持続させていくための取組みでもあります。
また、エビ事業の枠を超えて、豊かな自然環境を維持するために工場で使う作業衣の洗濯には石けんをつくって使用するなど、環境との調和を目指した活動も展開されています。
エコシュリンプの20年間の取り組みを通じて、新しいエビ事業のかたち=「消費者側と加工工場と生産者とがつながる仕組み」を作ってきました。
これからのエコシュリンプの方向性
これからのエコシュリンプは、「生産者とつながる仕組みをどのように作るか」というところからさらに一歩踏み込み、「生産者と共に何をしていくことができるか」という主体的な動きを作っていきます。生産者が抱えている粗放養殖業の持続性という課題に対して、取り組んでいく予定です。
エコシュリンプ20周年
2012年、エコシュリンプはおかげさまで20周年を迎えることができました。
特設ページをぜひご覧ください。
関連ページ
- APLA:ATJ/APLAシンポジウム:エビ加工労働者とわたしたち ~エビから問い直す日本の食事情~ 2011年2月19日
- APLA:ATJあぷらブックレット1 『エビ加工労働者という生き方-エコシュリンプの加工現場から-』 2011年2月刊